料理は見て覚えるもの?
料理の世界ではよく「仕事は見て覚えろ」と言われます。確かに現場には多くの学びがあり、動きや段取り、空気感を観察することはとても大切です。しかし、ちゃんと見て真似しているはずなのにうまくいかなかったり、怒られたりと私はそんな経験の繰り返しでした。
その多くの場合、本質や構造を理解できていなかったからです。
表面だけを真似してたまたまできることはあっても、少し環境が変われば再現できない。その結果、「できるはずなのに自信が持てない」という状態になってしまいます。
私自身は、料理人として働き始めた頃はまさにそこに苦しみました。振り返ると先輩からの指示は「手順」が中心で、「なぜそうするのか」という理由までは語られないことも多かったように思います。もちろん当時の自分が聞き逃していた可能性もありますが、できる作業が増えても料理や仕事への自信はなかなか生まれませんでした。
理解していないものは、正確に再現できないからです。
この感覚は、レシピや動画で料理を学ぶときにも起こる事だと思います。一流シェフの動画を見ても、レシピ通りに作っても思った通りの結果にならない。それは「何をしているか」は見えていても「なぜそうしているか」が見えていないからです。
見るだけでは、理解には届きません。
だから私は料理を伝えるとき、見本をほとんど見せません。まず言葉で伝え、考え方を理解してもらい、その上で身体で感じながら身につけていく。頭と身体の両方で理解したとき、はじめて料理は自分のものになります。
そしてその状態になって、レシピや動画を見たときに「なぜそうしているのか」が見えるようになる。
つまり、理解した人だけが本当の意味で「見て覚えられる」のだと思います。
私は技術を言葉にすることにこだわっています。
言葉にできるということは、理解しているということ。
理解しているからこそ再現でき、応用でき、人にも伝えられる。料理は感覚だけの世界ではありません。理解を伴ったとき、料理は自由になり、自信へと変わっていきます。
「見て覚える」の前に、まず理解すること。
それが、私が料理を伝えるうえで大切にしている考え方で伝えたいことです。

